第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、司法書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、登記、供託及び訴訟等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資し、もつて国民の権利の保護に寄与することを目的とする。
(職責)
第二条 司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節 の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第二百七十五条 の規定による和解の手続又は同法第七編 の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節 の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法 (平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法 (昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目 の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないもの
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
八 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第百二十三条第三号 に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号 に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
2 前項第六号から第八号までに規定する業務(以下「簡裁訴訟代理等関係業務」という。)は、次のいずれにも該当する司法書士に限り、行うことができる。
一 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
二 前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
三 司法書士会の会員であること。
3 法務大臣は、次のいずれにも該当するものと認められる研修についてのみ前項第一号の指定をするものとする。
一 研修の内容が、簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力の習得に十分なものとして法務省令で定める基準を満たすものであること。
二 研修の実施に関する計画が、その適正かつ確実な実施のために適切なものであること。
三 研修を実施する法人が、前号の計画を適正かつ確実に遂行するに足りる専門的能力及び経理的基礎を有するものであること。
4 法務大臣は、第二項第一号の研修の適正かつ確実な実施を確保するために必要な限度において、当該研修を実施する法人に対し、当該研修に関して、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又は必要な命令をすることができる。
5 司法書士は、第二項第二号の規定による認定を受けようとするときは、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。
6 第二項に規定する司法書士は、民事訴訟法第五十四条第一項 本文(民事保全法第七条 又は民事執行法第二十条 において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、第一項第六号イからハまで又はホに掲げる手続における訴訟代理人又は代理人となることができる。
7 第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イ及びロに掲げる手続において訴訟代理人になつたものは、民事訴訟法第五十五条第一項 の規定にかかわらず、委任を受けた事件について、強制執行に関する訴訟行為をすることができない。ただし、第二項に規定する司法書士であつて第一項第六号イに掲げる手続のうち少額訴訟の手続において訴訟代理人になつたものが同号ホに掲げる手続についてする訴訟行為については、この限りでない。
8 司法書士は、第一項に規定する業務であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。
(資格)
第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有する。
一 司法書士試験に合格した者
二 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であつて、法務大臣が前条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めたもの
(欠格事由)
第五条 次に掲げる者は、司法書士となる資格を有しない。
一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
二 未成年者、成年被後見人又は被保佐人
三 破産者で復権を得ないもの
四 公務員であつて懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
五 第四十七条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
六 懲戒処分により、公認会計士の登録を抹消され、又は土地家屋調査士、弁理士、税理士若しくは行政書士の業務を禁止され、これらの処分の日から三年を経過しない者
第二章 司法書士試験
(試験の方法及び内容等)
第六条 法務大臣は、毎年一回以上、司法書士試験を行わなければならない。
2 司法書士試験は、次に掲げる事項について筆記及び口述の方法により行う。ただし、口述試験は、筆記試験に合格した者について行う。
一 憲法、民法 、商法 及び刑法 に関する知識
二 登記、供託及び訴訟に関する知識
三 その他第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
3 筆記試験に合格した者に対しては、その申請により、次回の司法書士試験の筆記試験を免除する。
4 司法書士試験を受けようとする者は、政令で定めるところにより、受験手数料を納めなければならない。
(司法書士試験委員)
第七条 法務省に、司法書士試験の問題の作成及び採点を行わせるため、司法書士試験委員を置く。
2 司法書士試験委員は、司法書士試験を行うについて必要な学識経験のある者のうちから、試験ごとに、法務大臣が任命する。
3 前二項に定めるもののほか、司法書士試験委員に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 登録
(司法書士名簿の登録)
第八条 司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する司法書士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならない。
2 司法書士名簿の登録は、日本司法書士会連合会が行う。
(登録の申請)
第九条 前条第一項の登録を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に登録申請書を提出しなければならない。
2 前項の登録申請書には、前条第一項の規定により登録を受けるべき事項その他法務省令で定める事項を記載し、司法書士となる資格を有することを証する書類を添付しなければならない。
(登録の拒否)
第十条 日本司法書士会連合会は、前条第一項の規定による登録の申請をした者が司法書士となる資格を有せず、又は次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、その登録を拒否しなければならない。この場合において、当該申請者が第二号又は第三号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは、第六十七条に規定する登録審査会の議決に基づいてしなければならない。
一 第五十七条第一項の規定による入会の手続をとらないとき。
二 身体又は精神の衰弱により司法書士の業務を行うことができないとき。
三 司法書士の信用又は品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき。
2 日本司法書士会連合会は、当該申請者が前項第二号又は第三号に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない。
(登録に関する通知)
第十一条 日本司法書士会連合会は、第九条第一項の規定による登録の申請を受けた場合において、登録をしたときはその旨を、登録を拒否したときはその旨及びその理由を当該申請者に書面により通知しなければならない。
(登録を拒否された場合の審査請求)
第十二条 第十条第一項の規定により登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、法務大臣に対して行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による審査請求をすることができる。
2 第九条第一項の規定による登録の申請をした者は、その申請の日から三月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされないときは、当該登録を拒否されたものとして、法務大臣に対して前項の審査請求をすることができる。
3 前二項の規定による審査請求が理由があるときは、法務大臣は、日本司法書士会連合会に対し、相当の処分をすべき旨を命じなければならない。
(所属する司法書士会の変更の登録)
第十三条 司法書士は、他の法務局又は地方法務局の管轄区域内に事務所を移転しようとするときは、その管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に、所属する司法書士会の変更の登録の申請をしなければならない。
2 司法書士は、前項の変更の登録の申請をするときは、現に所属する司法書士会にその旨を届け出なければならない。
3 第一項の申請をした者が第五十七条第一項の規定による入会の手続をとつていないときは、日本司法書士会連合会は、変更の登録を拒否しなければならない。
4 前二条の規定は、第一項の変更の登録の申請に準用する。
(登録事項の変更の届出)
第十四条 司法書士は、司法書士名簿に登録を受けた事項に変更(所属する司法書士会の変更を除く。)が生じたときは、遅滞なく、所属する司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会にその旨を届け出なければならない。
(登録の取消し)
第十五条 司法書士が次の各号のいずれかに該当する場合には、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消さなければならない。
一 その業務を廃止したとき。
二 死亡したとき。
三 司法書士となる資格を有しないことが判明したとき。
四 第五条各号のいずれかに該当するに至つたとき。
2 司法書士が前項各号に該当することとなつたときは、その者又はその法定代理人若しくは相続人は、遅滞なく、当該司法書士が所属し、又は所属していた司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会にその旨を届け出なければならない。
第十六条 司法書士が次の各号のいずれかに該当する場合には、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消すことができる。
一 引き続き二年以上業務を行わないとき。
二 身体又は精神の衰弱により業務を行うことができないとき。
2 日本司法書士会連合会は、前項の規定により登録を取り消したときは、その旨及びその理由を当該司法書士に書面により通知しなければならない。
3 第十条第一項後段の規定は、第一項の規定による登録の取消しに準用する。
(登録拒否に関する規定の準用)
第十七条 第十二条第一項及び第三項の規定は、第十五条第一項又は前条第一項の規定による登録の取消しに準用する。
(登録及び登録の取消しの公告)
第十八条 日本司法書士会連合会は、司法書士の登録をしたとき、及びその登録の取消しをしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもつて公告しなければならない。
(登録事務に関する報告等)
第十九条 法務大臣は、必要があるときは、日本司法書士会連合会に対し、その登録事務に関し、報告若しくは資料の提出を求め、又は勧告をすることができる。